股関節形成不全症(CHD)の外科治療

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これはラブラドール犬の正常な股関節の正面X線画像です。丸くきれいな大腿骨頭(黒矢印)と深く型の良い寛骨臼(青矢印)が観察されます。
  正常な股関節
 
●2
これは重度の股関節形成不全症(CHD)を伴ったラブラドール犬の正面X線画像ですが、正常な股関節に比較すると、その異常さが理解できます。このようなCHDの患犬の最終的な治療法としては股関節全置換術(THR)が行われます。
  股関節形成不全(CHD)
 
●3
これは両側のTHRを行ったラブラドール犬の正面X線画像です。チタン合金製のステム(青矢印)と特殊なプラスチック製のソケット(黒矢印)を骨セメントで接合します。患犬は約1か月後には正常に近い生活が可能となります。
  股関節形成不全(CHD)
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●4
幼犬の重度の股関節形成不全症の治療の為の恥骨筋腱切除術
1)OP前のビデオ。重度の左右の股関節形成不全症の6カ月令のゴールデンです。骨格全体の発育不全、両側の腹腔内滞留睾丸,顎骨のアンダーショットなどを伴っています。
発病した若犬では時として後肢に激しい疼痛を伴い起立、走行,階段の昇降を嫌います。
 
 
2)X線所見 重度の左右の大腿骨頭の亜脱臼そして浅い寛骨臼(特に右側)等が観察されます。転子間骨切術、骨盤骨の三点骨切術、或いは股関節全置換術等は今の時点で適応外と判断しました。   幼犬の重度の股関節形成不全症の治療の為の恥骨筋腱切除術
 
3)恥骨筋腱切除術、この手術の目的は股関節形成不全症を治癒させるものでは無く、動物の痛みをとり、リハビリを促す事にあります。恥骨筋腱を切除する事によって関節包の緊張が取れ、さらに大腿骨の外転の範囲が広がり大腿骨頭が寛骨臼内に良く収まり大腿骨頭の関節軟骨への負担が軽減され、また恥骨筋自身へ掛かる緊張も取れ、疼痛が緩和されるものと考えられています。患犬は仰臥位に保定され、恥骨筋(黒矢印)を露出し   幼犬の重度の股関節形成不全症の治療の為の恥骨筋腱切除術
 
4)恥骨筋と恥骨筋腱の移行部にケリー鉗子を挿入します。この際、くれぐれと前方にある大腿動脈を巻き込まぬ事、また前方の内側広筋と後方の内転筋を損傷せぬよう十分な注意が必要です。   幼犬の重度の股関節形成不全症の治療の為の恥骨筋腱切除術
 
5)移行部を切除   幼犬の重度の股関節形成不全症の治療の為の恥骨筋腱切除術
 
6)切除された近位の恥骨筋腱は反転され恥骨筋に縫合します。反対側も同様のOPが行われます。   幼犬の重度の股関節形成不全症の治療の為の恥骨筋腱切除術
 
7)皮膚、皮下織は通常の縫合とします。   幼犬の重度の股関節形成不全症の治療の為の恥骨筋腱切除術
 
8)2週後のビデオ。疼痛も取れ軽い駆け足運動も出来るまで改善されました。今ではあまり行われないOPですがこの様な症例には有効なOPでした。  
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