トイプードルの重度の膝蓋骨外方脱臼症の外科治療

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重度の両側膝蓋骨外側脱臼の外科治療
1)この症例は7歳のトイプードルの重度の両側の膝蓋骨の外方脱臼です。幼犬時に両側の膝蓋骨の外方脱臼を指摘され、治療不可能と診断され、現在に至っておりました。  
 
2)正面X線所見では左右の大腿四頭筋の外方への偏移(黒矢印)、左右膝蓋骨の外方脱臼(赤矢印)、そして脛骨稜の外方への偏移(黄矢印)が見られましたが、膝関節内の重度の変形は見られません。   重度の両側膝蓋骨外側脱臼
 
3)膝蓋骨は外側へ脱臼し側面からのX線写真では大腿骨遠位の正常な部位に見られません。(赤矢印)。   重度の両側膝蓋骨外側脱臼
 
4)疼痛の激しい左側の患肢より手術を行いました。(大腿骨外側広筋の切除、外側関節包の切開、内側関節包の切除と縫縮、大腿骨滑車溝の再建、脛骨稜の内側への転位等)、を行い、大腿直筋―膝蓋骨―脛骨稜のアライメントを整えました。正常な部位に再配置された大腿四頭筋(黒矢印)、再建された滑車溝と膝蓋骨(赤矢印),内側へ転位された脛骨稜(黄矢印)、が観察されます。   重度の両側膝蓋骨外側脱臼
 
5)術後のX線側面像ですが、写真2で外側へ脱臼していた膝蓋骨は正常な位置に再配置されています(赤矢印)。   重度の両側膝蓋骨外側脱臼
 
6)左側膝蓋骨外側脱臼手術後45日目の歩様です。彼女は手術された左後肢に十分に体重を掛け、歩行そして走行が出来るようになりましたが、右側の患肢は以前と同様です。
 
 
7)左後肢の手術後60日目で右側膝蓋骨外方脱臼の手術は前回の術式と同様に行われました。この歩様は手術後30日目に撮影されたものです。彼女は左右の後肢に体重を負荷し、楽しそうに歩行そして走行が出来るようになりました。治療開始から完治まで3カ月を費やしましたが、この症例では膝関節内の変形が比較的軽度であつたので、大腿直筋―膝蓋骨―脛骨稜のアライメントの調整をする事により比較的、短期間で完治したものと考えられます。
 
 
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