症例:5才のフレンチブルドッグの女の子です。
主訴:
元気食欲はあるが半年前より背中の皮膚に湿疹、脱毛があり抗生物質、ステロイドで一時的に良くなるが、最近また目立つようになつた。かかりつけ医はフレンチ特有の湿疹なので仕方がない。シヤンプ―と外用を続けるように言われた。
同居のワンちゃんが当院で治療と食事療法で症状が良くなったので相談をしたいとのお話でした
経歴:
2才ころに血尿がでて、動物病院でストラバイトという結石があるため獣医師専用の処方食のフードを与えるように言われました。その後血尿はなくなったが、尿石用の処方食を続けるように言われて現在も与えています。最近はそのフードを食べなくなり、同居のワンちゃんが高タンパクのフードを食べているのをみて、とても食べたがるようになりました。尿はその後検査はしていませんが、フードは泌尿器用処方食のみ与えておりました。
他院で行った血液検査報告書を確認しました。血液検査を栄養解析しますと、体のタンパク質とミネラル類の低下がみられました。まだ5才なのにとても栄養状態が低下しておりました。
3年間与えられていた結石用の処方食は、主原料は米、コーンフラワー、肉類(鶏、七面鳥、ダック)、動物性油脂で、フードの主な原材料です。肉類とは人が食べているような、食品衛生基準の法律による肉とは異なり、人では食品として認められないような肉が入っていることもあります。フードで良質な品質を選ぶのでしたら、鶏肉、牛肉、豚肉などの表示があるものを選びましょう。このフードではタンパク質は少なく、一方炭水化物はタンパ質の2倍も入っていました。糖質が多い、低タンパクのフードなのです。
この処方食は、動物の泌尿器系疾患対応のフードでした。ペットが泌尿器系疾患を患い、動物病院で治療を受けると多くの病院では低マグネシウム・低タンパク質の療法食を勧められます。本症例のワンちゃんの処方食も低タンパク質で低マグネシウムのフードでした。
このフードは1時的にはフードとして与えても、1ケ月程で尿検査で確認しながら、良質なフードへの変更が必要になります。
5才という一番健康で元気な時代に必要なのは高炭水化物(糖質過多)のフードではなく、タンパクの多いフードが必要です。また、泌尿器系のフードは極端にマグネシウムが少なく疑問が残ります。結石が何故「できるかは、まだ原因は明らかにされておりません。マグネシウムと結石との関係も疑問視する考えもでています。
マグネシウムは300以上の体の代謝に関与し必須ミネラルです。人では、最近マグネシウム不足による様々なトラブルが報告されております。以前泌尿器系フードを販売しているメーカーの学術担当者に「このような低マグネシゥムのフードを長期間与えて、体に問題がおきませんか?」と質問しました。1ケ月以上たって「企業秘密ですのでお答えは出来ません」との回答がありますした。私はきちんとしたデーターがないフードは処方食として販売すべきではないと話ました。 フードの説明が長くなりましたね。
今回のわんちゃんは低タンパク食、低マグネシゥムの処方食を3年間続けていたため、体のタンパク質、ミネラルが低下していました。皮膚には食事の20~30%の栄養が必要とされております。低タンパク、低ミネラル食を長時間食べていたため、皮膚に十分な栄養が届かなく皮膚炎になったと考えられます。このようなことはとても多く見られます。獣医師はぺットの病気を治すのが仕事です、少なくとも病気を発症させてはならないのです。
来院の際に行った尿検査では異常はなく、フードの変更を提案しました。
治療:
食事は高タンパク食(40%)、低炭水化物(20%)のフードに変更してもらいました。
同居のワンちゃんが食べていたタンパク質40%、炭水化物20% の良質なフードを食べたそうにしていたそうです。同居のワンちゃんと同じフードにしてもらいました。 とても良く食べてくれるとのことでした。
しかし、長年低タンパクと高糖質(炭水化物)のフードを与えられていた体は、食事のみでは改善は難しいのです。そのためには分子栄養療法のサプリメント療法が有効になります。
医療用サプリメントはプロティン、総合ビタミン剤+ミネラル、亜鉛製剤、MATRIX療法を与えてもらいました。
皮膚の炎症にはMATRIXのスプレー剤とCBDオイルの軟膏を使用しました。MATRIXスプレーもCBDの軟膏も皮膚の炎症には効果があります。
経過:
食事を変更し、プロティン、総合ビタミン剤、亜鉛製剤、MATRIXによる治療を始めて1ヶ月後にオンラインによる診察を行いました。
皮膚は改善し、痒みの減少し眼の周りの毛も生えてきました。
更に1ケ月後には皮膚はほぼ健康な時の皮膚の状態に戻り、あちこちに脱毛がありましたが改善してきました。眼の周囲の毛も元に戻り、元気食欲もあり全体的に改善がみられました。
人では皮膚病、アトピー性皮膚炎の主な原因は様々な栄養素の不足によると言われております。
今回はステロイドや抗生物質を使用しないで、食事療法と分子栄養療法による血液の栄養解析により選択された栄養素によって改善されました。
栄養素を皮膚病の治療に用いて改善されました。
今回の症例は尿のストラバイトという小さな結晶が尿検査で検出されました。獣医師よりは一生泌尿器系の処方食を食べなければいけないといわれました。その後の尿検査はせずに3年間このフードのみを与えておりました。獣医師が提案した処方食は治療用のフードのため、ミネラルが制限されておりました。処方食は症状が改善されたら、普通のフードに戻します。症状により戻れないこともありますが、その場合は動物の栄養状態をしっかり把握して、必要な場合は医療用のサプリメントを使用します。
今回の症例は1回尿に結晶成分が含まれてから、1度の尿検査もしないで3年間同じ処方食を食べていました。その結果、栄養不足、ミネラル不足の体になり皮膚病となりました。獣医師はフレンチブルドッグだからしかたがないと飼い主さんに話したそうです。処方食は動物の病気のために必要な動物も多くおり、恩恵を受けております。しかし使用方法が間違えると他の病気を起こす可能性がありますので、獣医師の注意も必要になります。
今回の症例は抗生物質、ステロイドを使用しないで皮膚病の改善ができました。
分子栄養療法の食事療法と医療用サプリメンで綺麗な皮膚に改善し、元気、食欲もあり快適な毎日を送っております。
「治療前写真」


「治療2ケ月後」

